つぶやき。

都内某大学に通う医学生。考えたまま書きます。

勤務先での出来事、ここでも「ゆとってんなあ~」

今朝は東京でも今シーズン最も寒い朝となりました。北日本では雪も降り本格的な冬が到来しつつあります。

 

本日は教育関係のことについて。

初回投稿の際に申し上げた通り、私は学生生活を送りながら、教育関係の仕事に就いています。

塾の講師や家庭教師、さらには水泳教室のコーチなど多岐にわたりますが、私はこれらを「バイト」とはあまり呼びません。

もちろん学生ですので、正式には企業に務めているわけではなく、形態はアルバイトですが、子どもの教育に携わる「仕事」として、責任をもって働いています。

 

今日、お話したいのは、そんな仕事でのあるエピソード。

私の勤めている塾は、小中学生の中高受験を対象にした塾なのですが・・・。

その時は夏休みで、夏期講習ということもあり、私は普段働いてはいない校舎での10日間の出張授業でした。

あまり大きい塾ではないので、校舎には50代の男性校長と講師が2人、40代の男性講師と私と同い年の大学生女性講師、事務職の方が1人くらいですかね。そんな狭いコミュニティの中での10日間の勤務となりました。

 

教室と職員室も近く、他の先生がなさっている授業の様子も目と耳に入ります。自分の講義も他の先生方に聞かれていると思うと、慣れない校舎ですし、少し緊張もしました。

 

さて今回の話は、校長と女性講師のA先生が登場します。

A先生は、ものすごくエネルギッシュな方で、授業もどちらかと言えば「スパルタ」。しかし、ただ厳しいわけではなく、とにかく面倒見が良い。授業の合間をぬって、自習している生徒たちからの質問対応。授業に欠席してしまった生徒には、授業後に直接電話をかけ、その日やった内容と次の授業までの宿題の伝達。

小学生はかなりビビっている子も多かったですが、みんな必死にA先生について行こうとしている雰囲気がして、受験を控えた生徒達には最適な方だと私は感じていました。

 

校長の紹介も一応しておくと、長年この塾に務めていらっしゃる方で、授業はベテラン感のある、口数は少ないものの生徒を引っ張っていくスタイル。とにかく、大きな声を上げたりはしないものの、無言の圧力みたいなもので、課題をやってこなかった子や、小テストの結果が悪かった生徒たちは、それに圧倒されているようでした。

 

私がこの教室で勤務し始めて4日目頃、ある出来事がありました。

私も数学を担当していた中1のある女子生徒が、その日の全授業後、校長の耳元の近くで何かをささやいています。

それを聞いた校長は、すかさずその女子生徒を空き教室に、何かを話しているようですが内容は分かりません。

5分くらいして2人は出てきて、その女子生徒は帰っていきました。

 

私とA先生は、大人しかいなくなった職員室で何の話を彼女がしてきたのかを校長に尋ねました。するとこんな内容でした。

話によると、その女子生徒は「A先生が怖い。怖いがゆえに質問もできないし、授業にも集中できない」という内容でした。

私とA先生は、これを聞いてポカンとしました。

「それで??」

って思いました。

 

すると、校長はこんなことを言いだしました。

「A先生は、この生徒に申し訳ないと思わないの?一人の生徒がA先生のせいで、傷ついたんだよ?教師として態度を改める気がないの?」

私は「は?」と思いましたが、さすがの私もこの場面は自分の話をしているわけではないので余計な口は挟まず。

A先生はもちろん反論します。

「生徒の成績を上げて、志望校に合格させることが私たち教師の仕事です。中1の教室には15人ほど生徒がいるわけで、他の生徒たちは必死に遅れをとらないようにしがみついてる。私に叱られてもめげずに頑張る。その代わり、できたら私はその子を褒めます。もちろん、生徒1人1人それぞれの尺度で。人には得意不得意があって、もちろん全員が同じレベルに達することが目標ではない。まずまず私のことが怖いから、校長にそれをヒソヒソ話で言いに行くなんて、ずるくないですか?」

それに対して校長はこう話しました。

「私たちの仕事はサービス業。全員が喜ぶようなサービスを子どもたちに提供しなければならない。同じお金を払っているわけなのだから、平等なサービスを提供しなくてはならない。A先生はそれができていないから、今回みたいなことが起きた。彼女の耳打ちは『助けて』という内容。そんなサービスを提供する仕事ではない。」

 

私は、ここで本邦の現代教育の価値がどれだけ低いかを実感しました。

まずここは学校ではなく「塾」であるということ。生徒がまたはその親御さんが、勝手にお金払って、塾に通っているわけです。塾は無論、私立です。

サービスという観点で言うならば、同じお金を払って、全員同じ授業を受けているわけです。その授業で何を吸収できるか、授業後に質問にいったりして、どれだけその価値を高められるかは、サービスを受ける側にあるわけです。

A先生はもちろん、他の先生も授業の中で生徒たちに平等な授業をしないということはありません。最も優秀な子に合わせて進むわけでも、最もできない子に合わせて進むわけでもありません。

まず第一に、勝手にお金を払って塾に来ているわけですから、先生との相性が合わないのであれば、その先生の授業は受けないとか、塾を変えるとかすればいいわけですよね。

A先生は殆どの生徒から信頼されていて、厳しいと感じる子も多いと思いますが、みんな必死についていこうとしている。その気力がないのであれば、その先生とは合わないだけなのだから、何か動くべきは生徒の方です。

先生との相性が合わないとかで塾を変えたりすることを批判する方も、現代ではかなり多いですが、私はそうは思いません。勝手にお金を払って塾に通っているんだから、無駄なお金を払うよりは、何百とある学習塾のなかから、自分の合うものを探せばよい。

 

そして次にこの生徒の行動。

「中1にもなって、ある先生が怖いから他の先生に相談するって、どういうことですか?」

これが私のいう「ゆとり教育による最大の問題点」です。

自分のことを相手に向かって主張できないわけです。なんでも言いたいことがあるときは他人経由。

どうしても言えないのなら、親に塾を変えるように頼めばよい。

自分の主張や表現を自信をもって言えない人は、いつでも他人経由で伝えます。

「陰口」もその代表例です。

「○○さんが嫌い」ということを○○さんに直接伝えられないから、誰かほかの人に伝える。なぜ直接伝えられないか。それは自分の気持ちに正直でないからです。そして自分の考えに自信がないから。「ネット越し」というのもこれに当てはまりますよね。

 

ちなみにこんなことを校長が口にしました。

「その女子生徒がなぜ私に伝えに来たとおもう?それは信頼関係があるからだよ。A先生と彼女の間に信頼はある?」

多分これは信頼関係ではありませんね。明らかに、その女子生徒に校長が舐められているだけですよね。

「こいつ(校長)だったら私(女子生徒)のこと『可哀そうにー』って思うだろうし、こいつに伝えておけば、少しはA先生も優しくなるだろう」

という女子生徒の思惑に校長は完全にはまってますね。

 

まあ、この2人の先生の口論は30分くらい続いたのですが*1

 

 

この日は自分のことでもないので、私も全く口を挟むことはしませんでしたが、この校舎での勤務最終日、子どものいなくなった職員室で再び3人になる場面がありました。

私は荷物をまとめながら、

「そういえば例の女の子、あれからどうですかね。私の授業でも結局10日間、彼女はあまり発言とかも多くはなかったですけど・・・。

我々と合わないのならやめちゃえばいいと思いますけどねー。だってここは塾ですから。公立の学校じゃないですから。

もっと、分からないことがあるならアピールできる人になってほしいですね。これが『ゆとり』ですかねー(笑)

では、10日間お世話になりましたー。」

とだけ伝えて、教室を後にしました。

*1: